『AGESAGE 3』(2021年)

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≪ストーリー≫

モラボリーによる侵略作戦をモナクリフたちが阻止してから、長い年月が経った。しかし、平和はある日突然にして破られる。ログの神殿が再び姿を変えたのである。ラベルの新米隊員ギコーチェを監視役に置き、モナクリフたちは過去ログの世界の様子を見守ることにしたが…。

主な登場人物

モナクリフ
ギコリオの友人。変貌を遂げたログの神殿に危機感を覚えます。大人しい性格ですが、芯は非常に強いです。

ギコリオ
モナクリフの親友。大人になったのか、熱血ぶりはあまり見せなくなりました。二刀流で戦うスタイルは変わりません。

モラール
ラベルの捜査員。上司のツーリアと結婚し、幸せな生活を送っています。エリート発言はすっかりなりを潜めました。

ツーリア
ラベルの指揮官。部下のモラールと結婚しました。時間を制御するクロックアップの能力は、いまだ健在です。

ロックモナー
「近未来編」の主人公。ライート博士によって作られた戦闘用ロボットです。悪のロボット軍団に立ち向かいます。

ケンゾー
「青春編」の主人公。非リア充の高校生で、映画鑑賞とオンラインゲームが趣味です。同級生のコハルに恋をします。

バーク
「疑惑編」の主人公。テレビ局の撮影スタッフです。転職に有利な情報を得るため、クリスとコンビを組んで活動します。

ミナミ
「地下迷宮編」の主人公。天真爛漫な女子高生です。遭難した友達を助けるため、地下迷宮の世界に飛び込みます。

アヒャール
「戦場編」の主人公。『初代』に登場した人物と同一人物です。ログの海を求めて旅をしています。

ウッド
「深海編」の主人公。人工知能が搭載されたロボットです。潜水艦内で起こる様々な問題に対峙し、成長していきます。

ギコーチェ
ラベルの新米隊員。過去ログの世界の監視を任じられます。『2』に登場したある人物が成長した姿です。

モラボリー
前作のラスボス。モラールの実兄です。度重なる空間移動が負担となり、精神崩壊してしまいました。

???

開発秘話+

すごく、時間がかかりました

『2』から10年以上経ってからの『3』です。正直なところ、『2』以降の制作は(当初)考えていませんでした。ところが、その間、多様な媒体で様々な作品に出合ってきたことでその考えは揺らぎ始めます。作品を楽しみつつも「これ、モナーRPGだったらどう表現できるだろう」という思いが少しずつ増えていったのです。そして、結局、『2』の続編という形で『3』の制作を始めることとなりました。2015年頃だったかと思います。一番最初に仕上げたのが「深海編」。そこから「青春編」、「近未来編」、「戦場編」、「疑惑編」、「地下迷宮編」の順に制作していきました。後でも触れますが、「戦場編」の完成を迎えた後(2017年頃)、スランプに陥ります。

今度の舞台は6つの世界

『初代』も『2』も、様々な世界を探索していくという流れではありましたが、ストーリーの都合上、それらの世界を自由に行き来できるわけではなく、一本道的な展開でした。『2』終盤にて、ようやくプレイヤーの意思で好きな世界を再訪することができるようになります。ゲームバランスの調整など、それはそれで課題が見られたのですが、自由度の高い方がよりプレイに深みが生まれるのかな、と個人的に思いました。そういった当時の思いを振り返り、『3』では最初から自由にシナリオを選択できる仕様にしました。そして、分かる人には分かると思うのですが、これは『LIVE A LIVE』のオマージュであります。最初に制作した「深海編」からも雰囲気が伝わるのではと思います。

深海編①~ウッドは何を見たか、何を学んだか

 シナリオ選択を『3』に取り入れたのは、『LIVE A LIVE』の影響が大きいです。ゲームそのものは未プレイなのですが、たまたまプレイ動画を視聴する機会がありました。その時、ちょうど流れていたのが「SF編」でした。スーパーファミコンの時代にこんな物語があったのか、と衝撃を受けたことを覚えています。閉鎖空間、ドロドロの人間関係、襲い来る猛獣…と、映画が1本制作できそうな程の素材が凝縮されたシナリオでした。これをオマージュ(なんておこがましい。パクリですね)したのが、『深海編』です。主人公は鋼鉄のボディをもつ、ウッド。「SF編」同様、閉鎖空間の中で生まれたロボット(人工生命)です。まだ喋ることのできない彼を主軸に、物語は進んでいきます。「SF編」では宇宙空間が舞台だったので、脱出不可能な閉鎖空間ということで深海を設定しました。他のキャラクターも、「SF編」のキャラクターに則って設定しています。なんと、RPGなのに戦闘がボス戦の1回しかありません。ところで、画像は「SF編」でも屈指のトラウマシーンを再現した部分なのですが、実際にツクールで表現してみると、実に淡泊な仕上がりとなってしまいました。(当然ですが)やっぱり『LIVE A LIVE』は名作です。

深海編②~どうしようもない人間関係

「SF編」で緻密に描写されていた人間関係の複雑さを、「深海編」でも描ききろうと努めました。部下たちの関係性の悪さを見抜きつつも具体的に手を差し伸べない船長、船長補佐という立ち位置にも関わらず優柔不断で信頼の置けないフース、そんなフースから恋人・ラッチェを奪い傲慢に振る舞うニダール、自分を巡る男女問題が船内に不和を起こしていることに気付かないラッチェ、真っ当な性格だが全体を変えるだけの力をもたないノウヤ…。制作してみて気付いたことは、「自分の周りにもいるよな、こういう人たち」という部分でした。フォン軍曹の「この船は最悪だ!!」のセリフは、これらの人間関係の負の部分を踏まえての発言であるとも言えます。ノウヤは、自分に人間関係を調整する力がないことが分かっていました。そこで、彼はウッドを製作します。ウッドとクルーらが初めて顔を合わせた時、ほんのひとときでしたが、その場が和やかな雰囲気になりました。ノウヤのウッドへの愛情は本物ですが、当初はクルー同士のコミュニケーションを深めるための「道具」としてウッドに価値を見出していたのです。穏やかな雰囲気をもつノウヤでしたが、どうしようもない現状に限界を感じていました。

深海編③~暴走する人工知能たち

潜水艦・フォートロエンデ号は海底神殿の探査を目的としていましたが、これは方便で、真の目的は「神殿の爆破」でした。神殿の奥に鎮座する防衛装置「アビス・システム」。このシステムが劣化によって暴走を始めました。海底火山の噴火を外敵からの攻撃と誤認し、報復措置のためミサイルを世界各地に発射したのです。神殿に迫るフォートロエンデ号を敵と認識したシステムは、オートマトン(自動人形)を差し向け、艦内のクルーを殲滅しようと試みます。このアビス・システムの元ネタは、『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』に登場する大ボス「ポセイドン」です。「SF編」では宇宙船内に格納していたベヒーモスが脱走して大暴れする設定でしたが、このベヒーモスをオートマトンに変える形で再現を行いました。そこで、オートマトンを操る黒幕ということでアビス・システムの設定が生まれたのでした。フォートロエンデ号を統括するOS「10改」。ネーミングは、爆薬を抱えた潜水艦ということで、旧日本軍の特攻兵器「回天」に基づいています。高度な思考回路をもつ10改は、自身が艦と運命を共にする結末に納得がいかず、クルーらを次々と抹殺していきます。10改の顔グラは文字だけで表現されていますが、シナリオの進行に合わせて文字色が青→黄→赤へ変わっていきます。シナリオの冒頭では青色だった10改は、ある場面から黄色(危険)に変わります。10改も、複雑な人間関係を疎ましく思って見ていたのでしょう。そして、ついに匙を投げました。クルーに期待することをやめた10改は、恐るべき計画を実行に移していきます。

深海編④~世界は繋がっている?「スウェイズ」

シナリオ終盤にて、ウッドはフォンと協力して10改のシステムを破壊することに成功します。フォンは、フォートロエンデ号のクルーたちの中では異質な存在でした。彼だけが軍属だったのです。その真の目的は劇中で明らかになるのですが、シナリオ冒頭では彼はウッドに対して嫌悪感を隠そうとしません。その理由は、彼の母国であるスウェイズがアビス・システムによって滅ぼされてしまったためでした(家族も失ってしまいます)。ロボットを極端に嫌うフォンでしたが、ウッドが信頼の置ける存在であることが分かると、態度を改めます。戦友としてウッドと関わり、すべての戦いが終わった後、身の上話を語り始めます。そんな彼の故郷であるスウェイズですが、別のシナリオにも登場します。「地下迷宮編」は舞台がスウェイズで、ミサイルらしきもので市街地が消し飛ぶ様子が描写されています。「青春編」では、技術の成績が優れているケンゾーに、教師がスウェイズ留学の提案をもちかけます。その留学先の高校は「ライートバーグ高校」。そう、「近未来編」に登場するライート博士が理事長を務めているのです(なので、技術系の名門高校です)。シナリオごとに独立した世界をもつように見えて、『初代』同様、世界間がどこかで繋がっていることが示唆されています。もっとも、制作が最初期である「深海編」は別のシナリオとのクロスオーバー要素はほぼゼロです。なので、最初にプレイするとしたら、前情報が必要ない「深海編」をお勧めします。

青春編①~アオハル要素は「ありません」

 「深海編」の次に制作した「青春編」。シリアス成分の濃かった「深海編」とは逆に、バカバカしさを前面に出すシナリオにしたいと思っていました。ということで、おバカな男子高校生たちを中心に据えたシナリオを考えました。ところが、私自身、所謂「陰キャ」寄りの学生時代を過ごしていたので、アオハルと呼ばれるようなキラキラしたシナリオはとても考えられません。そこで出合ったのが、大槻ケンヂ氏の『グミ・チョコレート・パイン』と花沢健吾氏の『ボーイズ・オン・ザ・ラン』でした。キャラクターの設定については前者が大部分を占めていますが、シナリオについては後者の方に寄せています。両者に共通するのは、「冴えない若者」が主人公である点です(後者の主人公はサラリーマンですが)。これらを参考にして制作を始めますが、途中であることに気付きます。戦闘を入れなくても、ストーリーが進んでしまうのです。先に完成させた「深海編」も戦闘がボス戦のみでした。複数のシナリオの中で、戦闘のほぼないシナリオが1つはあっても良いかなと思っていたのですが、さすがに2つもあるのはよろしくありません。この問題を解決するために、オンラインゲーム「モンスタークエスト」の設定を取り入れました。ゲーム中のミッションをクリアするために、パーティーを組んでモンスターの討伐をしなければなりません。こうして、最低限のRPGの体裁を保った「青春編」が出来上がったのです。最初にプレイするなら「深海編」をお勧めしますが、難易度で選ぶとしたら「青春編」が最も簡単にクリアできるでしょう。理由は、最後のボス戦で分かります。

青春編②~天井が見えることの辛さ

「青春編」は、オンラインゲーム「モンスタークエスト」から始まります。劇中劇のような扱いのこのゲームですが、端的にまとめると「フレンドと組んでモンスターを討伐」するのが主な目的であります。ケンゾーたちは、このゲーム界隈ではとりわけ著名人のようです。「無課金で頂上を極めたプレイヤー」ということで名が知られていると、ケンゾーは思っています。確かに、ゲーム開始時点でケンゾーたちのレベルは最高値の50です。装備品も、あえて高性能なものを購入せずにステータスの低いベーシック装備のままです。それなりに労力をかけてここまで育ててきたのは想像できます。プレイ時間も相当なものだったに違いありません。豊富な経験でレベルの低い課金ユーザーを助けることも少なくなかったのかもしれません。しかし、後に新人プレイヤーのコハルと合流することで、違和感が浮かんできます。ケンゾーとコハルの能力値が大差ないのです。コハルに至っては、レベルが25(ケンゾーの半分)です。それなのに、能力はほぼ変わりません。コハルはまだまだレベルが上がっていきます。つまり、もっと強くなれるのです。一方で、ケンゾーはもうレベルが上がりません。もう強くなる伸びしろはどこにもないのです。ケンゾーよりかは現実を客観視できる(であろう)ガナボンとワラオ。彼らが途中からゲームをやらなくなった理由は、受験勉強もあったかもしれませんが、そういった現実に気が付いてしまったから…かもしれません。ところで、酒場にいるNPCには名前がついているのですが、同じく花沢健吾氏の『アイアムアヒーロー』の登場人物名に基づいています。その理由は、「地下迷宮編」の時にでも…。

青春編③~最終章の伏線・ヲタノウエ

謎のクラスメイト・ヲタノウエからコハルが退学することを聞かされたケンゾー。同じクラスのリア充・タカヒロが絡んでいることも聞かされ、怒りに燃えます。タカヒロのもとへ殴り込みをかけ、勢いのまま決闘を申し込みます。これは、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』のオマージュです。この後、ヲタノウエの指南を受け、ケンゾーは決闘に向けて準備を進めていきます。しかし、結果は惨敗に終わります。ケンゾーの隠し技(ヲタノウエ直伝)のことがどういったわけかコハルに漏れていて、そのコハルがタカヒロに報告していました。『ボーイズ…』では、主人公が隠し技のことを自らヒロインに喋ってしまい、そこからライバルへ情報が抜けてしまいます。けれど、ケンゾーはコハルに隠し技のことは伝えていません。では、誰がコハルに情報提供したのでしょうか。犯人は、ヲタノウエでした。最終章で明らかになりますが、このヲタノウエ、「???」が変身した姿でした。コハルが退学することを知らずに、ケンゾーが学校生活を送ることは可能でした。しかし、刺激を求めていた「???」は、事態が泥沼化することを望んでいました。ケンゾーが心を乱す姿をもっと見てみたかったのです。なので、協力的なクラスメイトを装いケンゾーに近付きました。そして、ケンゾーに隠し技を教え、そのことをコハルにも教えてしまいます。コハルがタカヒロに隠し技を伝えることは、「???」にとって想定の範囲内だったのです。完膚なきまでに叩き伏せられるケンゾー。「???」が何よりも望んだ結末だったのでしょう。さらに悪質なことに、ヲタノウエはケンゾーに嘘の情報を教えていました。コハルが退学となった原因は酒とタバコだったのですが、それに「妊娠」も加えていたのです。多感な少年が怒りを爆発させるために、嘘をついたのです。『ボーイズ…』では、実際にヒロインは妊娠してしまうのですが、ケンゾーたちが未成年であること、そこまでドロドロした展開にしなくても良いかな…という考えのもと、「妊娠」は嘘であるとしました。

青春編④~コハルがもたらしたもの

『3』から、主要人物に限り、顔グラを導入しました。『初代』では、ギコリオとメルシィの別れの演出として1回だけ顔グラを使いました。『2』では、第4の世界(VIPRPG風の世界)のキャラクターに限り、顔グラを使いました。『2』の場合、素材元のイラストが私好みだったということもあり、積極的に使いました。「やっぱり、RPGには顔グラがある方が良いな」と思ったものでした。ところが、当時の私の技術では顔グラを自作することができませんでした。それから時が経ち、『3』の制作が始まりました。素材収集に加え、顔グラの作成にも取り掛かりました。一番最初に仕上げたのは、コハルでした。制服バージョンと私服バージョンの2種類を(無駄に)用意しました。とにかく時間がかかりました。まだ制作以前の段階だったので、キャラクターの設定が固まっていませんでした。結果的に『ボーイズ…』のヒロイン同様、悪女として描かれたコハルだったのですが、初期稿ではケンゾーの相棒ポジションという役どころでした。私自身の技術の範囲内で、どのキャラクターも良い感じに顔グラが作成できたと思っています。コハルで四苦八苦したのが良い経験になりました。元がAAのキャラクターというシンプルさがゆえに、表情づけは意外と難しかったです。その中でも、どちらかというとリアル寄りのコハルは異色な存在だったのではないでしょうか。劇中、ヒロインから悪女に転落したコハル。その後、最終章、意外な場所で彼女と再び顔を合わせることができます。

近未来編①~あの4人が、帰ってきた!

 「ロクモナ編」の方が分かりやすいのですが、他のシナリオとの整合性をもたせるという意味で、「近未来編」となったシナリオです。『初代』の開発秘話においても触れていますが、私にとっての原点は『ROCK MONAR』でした。実は、『初代』より前、何回か『ROCK MONAR』の続編を考えたことがあったのです。ですが、実際に制作に移る前に企画倒れしてしまいました。それでも、まだ彼らに冒険させたいな、という思いは心の片隅に残っていました。そして今回の『3』制作。長編のように壮大なシナリオは難しくても、短編程度のものなら…ということで、『ROCK MONAR』の続編を「近未来編」として展開する運びとなったのでした。登場人物は、『ROCK MONAR』から全員続投です。シナリオとしては、『ROCK MONAR』に登場したロボットたち(カットマンたちライートナンバーズ)を容易く撃破してしまうさらに高性能な戦闘ロボ軍団(所謂ワイーリナンバーズ)を倒していくという王道展開です。シナリオ冒頭、首相誘拐までの流れは、有賀ヒトシ氏の『ロックマン メガミックス』をオマージュしています。ワイーリナンバーズは歩行グラを作成する余裕がなかったため、モブキャラの歩行グラを使いました。代わりに、戦隊ヒーローの名乗りのようなセリフを1体ずつ与えて少しでも個性をもたせようとしました。正直なところ、10年以上のブランクがなかったかのように、かつての『ROCK MONAR』の正統な続編を制作することができたなと感じています。限りなく当時の雰囲気を再現することができたのではないでしょうか。

近未来編②~セーブを駆使してがんばって…!

『ROCK MONAR』では、劇中でアクションゲームの要素をもたせた場面がいくつかありました。元ネタがアクションゲームですからね。また、当時プレイしていたモナーRPG(モナーRPG、という括りで良いのかは不明ですが)『アソパソクエスト』の影響が大きいです。このゲームにも、劇中でトラップが飛び交うダンジョンが度々登場するのです。これが、当時の私には深く刺さりました。「ツクールでアクションゲームのような仕掛けを作ることができるんだ!」これを自分のゲームにも反映させてみたいな、ということで『ROCK MONAR』にアクションゲームとしての要素が(若干)加わったのでした。「近未来編」においても、当時の発想を大切にしたいという思いがありました。チャージシティのダンジョンでは、ブレード、追尾式ミサイル、レーザービーム、そしてスナイパー(上画像)の4種類のトラップがプレイヤーの行く手を遮ります。特にスナイパーは、トラップ(フロアセンサー)の個数と配置場所に難儀しました。テストプレイを何度繰り返したでしょうか。常時セーブできるようにしているので、苦手な人はこまめにセーブをして、着実に駒を進めていく方法が最良かと思われます。なお、当初はクラッシュマンを倒すと脱出イベントが発生しました。全てのトラップを突破し、かつ待ち構えているボス・エアーマンを時間内に倒さなければゲームオーバーになってしまうという内容でした。しかし、イベントの設定条件等に不備が見られたため、この脱出イベントはなくなりました。原因を解明できず、申し訳ありません。余談ですが、終盤に登場するあるトラップは、元ネタ『ロックマン2』をプレイしたことのある人なら分かる、あるステージを再現したものとなっております。

近未来編③~RPGあるある?をあえて

クイック防衛隊は、『ROCK MONAR』の頃にも登場していました。警察に次ぐ防衛組織という触れ込みでしたが、実態はマニズミ首相の私設軍隊で、物語の終盤において暴走を始めてしまいます。マニズミは、大量破壊兵器を使い敵基地を味方ごと吹き飛ばそうと画策していた残忍な人物でした。しかし、潔い一面ももっていて、Dr.ワイーリから奇襲を受けると、逃げることなく粛々と最期を受け入れた人物でもありました。このクイック防衛隊の元ネタは、『メダロット』シリーズに登場する「セレクト隊」でした。物語の終盤に主人公勢を裏切る展開は『メダロット1』の設定を汲んでいます。また、マニズミについては『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場する地球連邦軍・大佐「イーサン・ライヤー」が元ネタとなっております。穏やかながらも狡猾な部分を併せもつ知将として描きたい、という思いがありました。画像のセリフですが、RPGあるある「続編になると、舞台が同じでもフィールドのつくりが変わる」のメタ発言でした。『ROCK MONAR』の頃にはなかった新しい町があるのはともかく、そもそも大陸(フィールド)のつくりが変わってしまっています。これ、あまり突っ込まれない部分ですよね。画像の隊員のように疑問符が浮かぶのは当然のことですが、それには『3』ならではの理由がありました。創造主によってこの世界は管理されていて、その創造主が起こした気まぐれによって、人々の記憶ごと大陸のつくりが変えられてしまっていたのです。すなわち、『ROCK MONAR』の世界は最初から『AGESAGE』の世界の中に組み込まれていた、ということが言えます。

近未来編④~ちょっとだけ回り道要素を

一番RPGらしいRPGが、この「近未来編」の特長かもしれません。パーティーに加わる人数が多く、また戦闘イベントも多めです。なので、必然的にレベルがどんどん上がります。あまり自由度の高くないシナリオなのですが(どのシナリオにも言えることですが…)、『ROCK MONAR』を意識したサブイベントがいくつか眠っています。その中の1つが、画像のイベントバトルです。『ROCK MONAR』でも隠しキャラ「クックル」と対決するイベントがありました。それの再現であります。取り巻きの3体を先に倒さないとボスは雲隠れしたままです。しかもこの3体、それぞれが攻撃タイプ、支援タイプ、妨害タイプと種別が異なるので、闇雲に攻撃しているとジリ貧に陥ってしまいます。どのキャラがどのタイプか見極め、戦闘を進めていく必要があります。彼らを倒すと、素敵なご褒美がもらえますよ。ところで、ロックモナーの特殊武器はどれが使いやすいでしょうか。私はクラッシュボムです。与えられるダメージにムラはありますが、基本値が大きいのが嬉しいですね。ところで、『ロックマン2』を意識したネタも散らばっています。使い勝手の良いメタルブレードは、消費MPが他の武器よりやや少ないです。エアーマン戦では、リーフシールドを使うとエアーシューターを封じ込めることができます。できることなら8ボス戦も再現したかったのですが、尺の都合で実現できませんでした。なお、最終章で別作品のロボットがボスとして唐突に出現します。これには、特に深い意味はありません。敵グラとして作成した偽ロックモナーをいじっていたら、偶然できてしまっただけなのです。幻覚を見せる敵と戦うイベントをちょうど作っていたので、まさに適役でした。

戦場編①~あのSF小説の金字塔に影響

 「戦場編」に限りませんが、各シナリオはスタート直後、画像のような「なんか意味ありげな英文」が並びます。その正体は、シナリオの世界観を端的に表現するとしたら、という思惑で方々から見つけてきた金言を英訳したものなのでした。演出の一環ですね。画像の英文は、「高いIQをもつより、もっとずっと大切なことがある」という意味です。ダニエル・キイス氏の名著『アルジャーノンに花束を』の中で使われた台詞を引用しました。『アルジャーノンに…』を初めて読んだのは20代後半の頃だったでしょうか。そもそものきっかけは、特撮番組『スペクトルマン』第48話、第49話でした。賢くなるために脳の手術を受けた青年が、苦悩の果てに怪獣と化してしまうという悲哀に満ちた話でした。そこで『アルジャーノンに…』を知り、その世界観にすっかり惹きこまれてしまいました。本当の幸せとは何か。儚さの中に僅かながら感じられる希望、余韻。これをモナーRPGの世界に落とし込むことはできないか。そんな思いから生まれたのが「戦場編」でした。主人公はアヒャールです。『初代』ではボスとしてギコリオと戦い、『2』ではツーリアの兄であることが判明したです(といっても『2』ではモブキャラ同然の扱いでしたが)。なので、『3』でのプレイアブルキャラクター化は異例の出世と言えます。確か、『初代』や『2』をアップした当時の「モナーRPGをつくろう!」スレッドで、アヒャールの存在感について触れてくれたレスをいくつか見た記憶があります。僅かな出番しかなかったにも関わらず、爪痕を残してくれた人物でした。後は、彼の暮らしていたキルキャット帝国の背景、登場人物(でぃ、マルミーミ博士)が『アルジャーノンに…』をオマージュするのにうってつけの要素だったという点が大きかったです。

戦場編②~『AGESAGE』の前日譚

回想シーンの後、主人公のアヒャールが野営地で目を覚ますところからシナリオは始まります。このシナリオ、時系列で区分すると『初代』以前の時期にあたります。理由は特に明かされませんが、「ログの海」を目指して旅をしていることが分かります。アラーシ団も存在しないようです。アヒャールの滞在する村がキルキャット帝国に属していること、フサベルグという都会があること。資源の乏しい帝国の首都・フサベルグは、『初代』後半にて戦場と化し、市民に大勢の犠牲者を出した曰くつきの都市です。「戦場編」となっていますが、劇中でアヒャールが戦場に放り出されるなんてことはありません。そう遠くない将来、アヒャールのいる世界が戦場へと変わっていくことがエンディングで示唆されているのです。ところでこのアヒャール、孤独な旅人であること、剣を装備していること、クールな性格であることなど、『初代』のギコリオを彷彿とさせる要素をいくつかもっています。ただ、決定的な違いは、ギコリオと違いアヒャールは最後まで単独行動を貫いたところでしょうか。アヒャールの妹・ツーリアも単独行動を得意とするワンマンアーミーでした。これが兄妹である所以かもしれません。コピペ(特殊技能)を見てみると、剣の使い手であるアヒャールは、剣に炎・氷・雷の属性を付与した斬撃を得意としています。ツーリアも剣の一撃による機動戦に長けていて、アヒャールとよく似たコピペを使うことができます。この2人がきょうだい同士であることを裏付けてくれる情報です。

戦場編③~アラーシ団結成秘話

アラーシ団は、『初代』に登場した悪の集団です。ギコリオから大切なアイテムを奪ったり、誘拐した旅人の血液を抜き取り●害してしまったりと、悪の限りを尽くしています。この「戦場編」では、そんなアラーシ団について掘り下げを試みました。不況で職を失った若者たちに、アヒャールは声をかけました。これがアラーシ団誕生のきっかけです。アヒャールは、集めた若者たちの労働意欲の高さを政府にアピールします。アヒャールの熱意に押される形で、アラーシ団は政府から委託された事業を請け負う団体となりました。優秀な職人集団に生まれ変わったアラーシ団は、古くなった変電所を復旧する業務を任されます。その傍ら、旅人たちを言葉巧みに誘い出していました。目的は、でぃたちを救うのに必要な血液を手に入れるためです。しかし元旅人でもあるアヒャールは彼らを●害することはできず、僅かに血液を抜くとすぐに解放していました。一方で、素行の悪い団員も中にはいました。彼らの中に、流石兄弟やギコリオから所持品を奪った輩がいました。ギコリオたちは手を組み、アラーシ団のアジトである変電所に攻撃を仕掛けます。応戦する団員たちですが、次々と撃破されていきます。アヒャールも立ち向かいますが、力及ばず、敗れてしまいます。アヒャールが良かれと思って始めたアラーシ団は、一部の悪意ある団員の行動によって壊滅に追い込まれてしまいました。アラーシ団の崩壊を見届けたアヒャールは、実家のプリン工場を継ぐかと冗談交じりに呟くも、本来の目的である「ログの海」を探す旅に再び出たのでした。…ギコリオから見たアラーシ団と、アヒャールから見たアラーシ団。果たして彼らは、壊滅させられるほどの大悪党だったのでしょうか。

戦場編④~哀しいアイテム

「戦場編」でフォーカスされたのは、アヒャールだけではありませんでした。ヒロインのでぃは、不幸な事故により家族を失い、また後遺症によって幼児ほどの知能となってしまいました。そんな自身の境遇に呪詛の言葉を吐くこともせず、ただ毎日を一生懸命に生き抜くでぃ。そんな彼女は村人たちから愛されていました。村の名士であるマニードも、彼女のために手作り菓子工房を構え、同じく訳ありな人たちを雇用して彼らに生活の基盤を与えていたのでした。シナリオ終盤、すっかり賢くなったでぃによってマルミーミ博士の悲願は達成されます。そして、それは同時に「終わりの始まり」でありました。自我の崩壊したでぃはアヒャールによって鎮められますが、その後は一体、どうなったのでしょうか。『初代』では、アヒャールが去った後のでぃの末路が描かれています。アヒャール、そしてマルミーミの庇護を受けられなくなったでぃは、ギコイルに捕まってしまいました。ギコイルが天使の力を封じ込めた魔石をでぃに押し当てると、でぃは天使シィエルへ姿を変えます。同じくギコエルに変貌したギコイルと組み、ギコリオと対決します。しかし、力及ばず、でぃは敗れてしまいます。負けてもなお諦めないギコイル。そんなギコイルに組みつき、でぃは自爆して果てるという壮絶な最期を遂げるのでした。画像のアイテムは、入手できる期間が限られたレアアイテムです。このアイテムをボス戦で使うと、あることが起きます。

疑惑編①~「Monagan編」を引きずった結果?

 上の方でも触れていますが、「戦場編」の制作まではそれなりのペースで進めることができていました。しかし、「疑惑編」の制作に取り掛かったあたりから雲行きが怪しくなってきたのです。理由は、このシナリオに役割をもたせ過ぎたことが原因でした。「疑惑編」のプロット自体は、『2』の「Monagan編」の後日談という位置付けでした。それだけなら大したことのない問題だったのですが、劇中に登場する「ウィルス」の扱いを巡り、制作は難航したのです。当初、このウィルスが別のシナリオ(後の「地下迷宮編」)にも影響を及ぼすという構想を立てていたため、「疑惑編」と別のシナリオを同時制作する運びとなってしまいました。プロットの整合性を合わせる作業はとても大きな負担でした。結局、別のシナリオは「地下迷宮編」と名前を変え、ウィルスとの関わりはほぼなくなったのでした。ようやく「疑惑編」単体として制作が軌道に乗るまで、1年近くは費やしたかと思います。いちシナリオとして見ると、やはり不完全燃焼な部分は否めません。これは元ネタの『Michigan』の難解さが影響していると思います。バークとクリスのイメージは、当時ハマっていた海外ドラマの登場人物を参考にしています。バディ感のある掛け合いは、このシナリオを制作していて(唯一)楽しかったところです。

疑惑編②~真犯人はあの人物

行方不明になった先輩方の無念を晴らすため、モナガン湖事件の再調査に乗り出したバークたち。奔走する彼らをあざ笑うかのように、様々なアクシデントがバークたちを襲います。例えば、キャンプ場で出会った謎の女・シーナ。秘密の情報を握っていた彼女は何者かに暗殺されてしまいます。不穏な出来事の裏には、ある人物の暗躍が隠れていました。その人物は、シナリオの終盤にてバークの前に立ちはだかります。予想に反した物語の展開は、元ネタの『Michigan』をオマージュしたものです。…もっとも、『Michigan』自体が超マイナーなゲームなので、「あの場面のことか!」というのが伝わりづらいというのが難点ではあります。

ところで、バークのバディ・クリスですが、一応は小柄な金髪美人という設定で温かく見てもらえるとありがたいです。当時の(今でもですけど)私の画力では表現できませんでした。

疑惑編③~バイオハザード的な不穏要素…いるか?

シナリオの終盤の舞台・キングゴルァサイド駅。廃駅の奥には謎の研究施設が広がっていました。ウィルスはそこで培養されていたのです。そのウィルスですが、設定自体は完全にバイオハザード(以下BH)シリーズの「T-ウィルス」そのまんまです(霧に混じって感染を広げていくという点は『Michigan』由来の要素ですが)。施設を探索していくと、不穏なメモ書きがいくつか見つかります。この辺りもBH的ですね。BHシリーズはあまり遊んだことがない(単純に、怖いのが無理なので)のですが、ゲーム内で拾える「FILE」は世界観や感染の恐怖がダイレクトに伝わる効果的なアイテムでした。「かゆうま」は名文だと思います。制作が難航した要因として、『Michigan』のRPG化というミッションを己に課してしまったことが考えられます。RPGとしての形を保ちつつホラー要素、謎解き要素を混ぜこぜにした結果、なんともアンバランスな一編となってしまったのが「疑惑編」でした。ボロクソに書いていますが、『Michigan』は今でも大好きですし、バークたちのキャラ設定(だけ)については十分満足しています。

疑惑編④~ノリで絡めてしまったキャラの末路

『2』の反省になるのですが、パロディ要素を詰めすぎてしまったことを再び挙げたいと思います。その中で特に異質な存在感を放っているのが、「エロリア」というキャラクターでしょう。この女勇者は、「VIPRPG」出身のキャラクターです。『2』制作当時、私は「VIPRPG」のゲームに何本か触れる機会があり、そこで大いに影響を受けました。結果、『2』のシナリオの一部に「VIPRPG」の要素を絡めるに至ったのでした。しかし、後年になって振り返ってみると、「モナーRPG」の世界にこれほど不釣り合いなキャラクターはいないのではないでしょうか。リアルな「人間」ですからね。そして、このエロリア、『2』での退場の仕方がなんとも困ったものでした。モラボリーの逃走の手助けをする形でフェードアウトしたのです。生き残らせてしまったなぁ…と『3』制作当初は頭を抱えました。『3』では「VIPRPG」要素は使わないようにしよう、と決めていたからです。

『3』オープニングの他、「疑惑編」終盤にて唐突にエロリアが現れ、戦います。勝利すると上記のセリフを吐いてエロリアは消滅します。ここで完全にエロリアは死亡するのです。エロリアの退場をもって「VIPRPG」要素をようやく排出することができました。立ち位置を含めキャラクターとしては魅力的だったエロリア。その場のノリで安易に使ってしまったがために、続編で呆気なく消されてしまった悲劇のキャラクターなのでした。

地下迷宮編①~当初は「感染編」でした

 「地下迷宮編」は女性キャラクターが主人公である唯一のシナリオです。しかし、この「地下迷宮編」は、完成まで最も回り道をしたシナリオでもありました。表題の通り、元々は「感染編」というタイトルでした。「疑惑編」に登場したウィルスによってゾンビが激増し、生き延びるため町から脱出するというストーリーだったのです。けれど、このプロットは早い段階で立ち消えとなりました。『のび太のBIOHAZARD』というフリーゲームと設定がまったく同じことが分かったからです。あとは、ARPGの要素を入れたかったのですが、それは技術的に無理でした。かくして、『バイオハザード』要素を断ち切り一から仕切り直すことになりました。「疑惑編」とのコラボができなくなり、かつ技術的に制作不能という不甲斐なさもあり、しばらくスランプ状態に陥ったのを覚えています。

結果、時間はかかりましたが、「普通の女子高生が主人公で、友人を助けるため地下迷宮の謎に挑む」というプロットが誕生しました。

どうでも良い話ですが、私は『3』のキャラクターの中で誰が一番好きかと聞かれたら、「地下迷宮編」の主人公・ミナミを挙げるでしょう。小動物的な可愛らしさがありますよね、ミナミちゃん。微妙に腹黒い部分があるのも人間的だと思います。『4』にキャスティングするぐらい好きです(その話は別の機会にでも…)。

地下迷宮編②~ 『4』の伏線になるなんて!

後でも触れますが、6シナリオすべて攻略後に起こるイベントは、「地下迷宮編」制作時にようやく方向性がまとまりました(遅すぎですね)。『初代』『2』『3』の劇中で大きく取り上げられているものの1つに「ログの海」があります。「ログの海」の正体については、いずれの作品においても明確な説明はなされていません。それもそのはず、私自身も「ログの海とは…」という確固たる答えを今に至るまで用意していないからです。「ログの海」は3つの作品を制作するにあたり、便利で都合の良い舞台装置の一種でした。いわゆる「デウス・エクス・マキナ」でしょうか。「ログの海に辿り着くと神(創造主)になり、自分の思うがままに好きな世界を創れる」という設定は一貫しているように思います。たぶん『マインクラフト』みたいな感じなんだと思います。

『初代』では層を通して世界が繋がっていることが示されていましたが、『2』ではそういった要素は描写できませんでした。『3』制作にあたり「異なる世界同士に見えて実は繋がってたら面白いかも」という発想の下、よその世界があることを匂わせる描写を劇中に取り入れるようにしました。上のセリフは世界間の繋がりを示唆するために用意したセリフなのですが、この発想は『4』制作の際、大いに私を助けてくれました。『3』で完結するつもりだったのに…。

地下迷宮編③~主人公がボスに! モブが主人公に!

『バイオハザード』シリーズからの方針転換を余儀なくされた「地下迷宮編」。登場人物については、花沢健吾氏の『アイアムアヒーロー』を当初オマージュしていました。「久喜幕府編」がそれに該当します。引きこもっていたおかげで感染を逃れた「ドクオ」が、「イノウエ」率いるレジスタンスに助けてもらい、仲間と一緒に町から脱出するというプロットでした。「ミナミ」はレジスタンスのメンバーで、中盤にボーイフレンドの「カドカワ」と一緒にゾンビに殺されてしまう役どころでした。こうして文章に起こしてみると、ほんの数行だけでも陰鬱とした展開ですよね。もはや記憶に残っていませんが、たぶんエンディングも不気味な感じに終わるものを考えていたと思います。ビターエンドが多い『3』の中でも特に爽快感に欠けるシナリオになっていたのではないでしょうか。

結果的にミナミちゃんが主人公となった「地下迷宮編」ですが、変更して良かったと思っています。ドクオが主人公だったとしたら、きっと思うようにシナリオ運びができなかったでしょうね。活発で社交的な性格のミナミちゃんだから、シナリオにメリハリをつけることができました。

余談ですが、『アイアムアヒーロー』の名残が残っています。覚醒後のドクオの顔グラです。全身の血管が浮き出た姿は、作中に出てくるゾンビ「ZQN」をオマージュしています。「青春編」のモブキャラのネームにも『アイアムアヒーロー』の登場人物の名前が使われていますよ。

地下迷宮編④~こんなに弱かったっけ?

「地下迷宮編」の大ボスを飾るのは、「ギコエル」と彼に操られた「ドクオ」です。このギコエルは、『初代』に登場したギコエルと同一人物です。魔石の力で暴走したギコエルはギコリオによって討伐されたのですが、その思念は消えることなく、肉体を再構築する機会を虎視眈々と探っていました。ドクオのエネルギーを奪い肉体を取り戻したギコエルですが、パワーは全盛期の半分もありません。そこで、ミナミたちに目をつけ、彼女らの肉体をも取り込もうとしたのです。

『初代』では強敵として立ちはだかったギコエルですが、「地下迷宮編」ではそれほどでもありません。シナリオの長さの都合上、必然的にレベルがそれほど上がらないまま最終局面を迎えるからです。たしか、レベル15にいくかいかないかでギコエル戦に流れるはずです。長編RPGではまだ序盤のあたりのレベルですよね。レベル15の主人公チームと戦うボスのステータスなど、たかが知れています。『ウルトラマンタロウ』に登場した「改造ベロクロンⅡ世」クラスの弱体化ぶりです。

ステータスの低さはゲームバランスの調整による仕様ですが、ギコエルの置かれていた状況を考慮すると、弱体化もやむを得ずといったところでしょう。ギコエルは本当は強いのです。モラボリーの妨害もあったし。ギコエルの名誉(?)のためにフォローしておきます。

最終章①~ギコーチェの正体とその目的

 6つの世界すべての攻略が終わったとき、ナビゲーター役だったギコーチェが突如豹変してしまいます。彼は攻略の際に解放されたエネルギーを自らの体内に取り込んだのでした。ギコーチェの正体、それは『2』に登場したチビギコ太だったのです。チビギコ太は、怪獣ゾヌルチに襲われていたところをモナスケという老人によって保護された孤児でした。暴徒の手によってモナスケが落命したため、居場所のなくなったチビギコ太はツーリアによって引き取られたのでした。成長したチビギコ太はギコーチェという新たな名前をつけられ、ラベルの新米隊員として働きます。見知らぬ世界ながらも順応していたギコーチェでしたが、育ての親同然だったモナスケのことが忘れられませんでした。ツーリアも彼女なりに愛情を注いできたのでしょうが、モナスケには遠く及ばなかったようです。ラベルの隊員として「ログの海」の情報に触れたギコーチェは、創造主の力に魅入られてしまいます。自分が創造主になれば、モナスケの温もりに再び触れられる世界を創ることができるかもしれない。そう考えたギコーチェですが、ログの海への扉を解放するためにはあまりにも非力でした。そこで、プレイヤーを扇動して6つの世界を攻略させることで、自らの手を汚さずにエネルギーを手に入れようとしたのです。目論見通り強大な力を手に入れたギコーチェは、有り余る力を解放。6つの世界を強引にくっつけてしまいました。そのことにより、各世界の主人公たちが揃い踏みを果たす「最終章」がいよいよ始まります。

最終章②~ 『SSSS.GRIDMAN』の影響

『3』にて、すべての発端がモナクリフにあったことが判明します。過去、創造主となったモナクリフはギコリオの尽力によって正気を取り戻すのですが、それ自体がモナクリフの描いた絵の一部に過ぎませんでした。モナクリフの正体は、我々と同じ「人間」だったのです。とある理由で現実世界に嫌気がさした彼はログの海を発見し、創造主モナクリフとして再スタートをします。創造主には世界の創造と破壊を自由に司る権限が与えられ、モナクリフは自分にとって居心地の良い世界づくりを目指しました。そう、これはまさに「RPGツクール」で遊ぶ我々そのものではないでしょうか。

この設定は『SSSS.GRIDMAN』の影響が非常に大きいです。ヒロインにして物語の黒幕である「新条アカネ」が本作におけるモナクリフのモチーフでした。アカネも自ら創った世界を維持するため、気に入らない人間を怪獣の力を使い消していました。しかし最初からアカネにそのような力があったわけではありませんでした。真の黒幕がいたのです。創造主の力に溺れてしまったモナクリフ。彼にそこまでの情動を植え付けた人物が『3』における「本当に倒すべき巨悪」だったのです。

もちろん、『初代』制作時にそのような構想はまったくありませんでした(2006年ですからね)。完全な後付け設定なのですが、それなりにスルリと溶け込ませることができたのではないか…と思っています。

最終章③~シックス・インパクトへの布石

物語の終盤において、ミナミの呼びかけをきっかけに各世界の主人公らが一同に揃う場面があります。ギコーチェによって強引に統合された世界同士が衝突を起こした結果、世界崩壊の危機に直面したためです。彼らの強い願いは奇跡を引き起こします。緊張状態にあった各世界は均衡を取り戻し、最終的に1つの世界に再統合を果たすことに成功したのでした。

贋造物だった世界が新たな世界へ生まれ変わるという展開は、『SSSS.GRIDMAN』最終話をオマージュしています。バラバラだったものが1つにまとまるという流れ自体が、一種のカタルシスを感じざるを得ない王道展開ですよね。『GRIDMAN』視聴当時、この最終話については何度も繰り返し視聴したぐらいです(元の『電光超人グリッドマン』が大好きだったからでもありますが)。既にお分かりかと思うのですが、『AGESAGE』シリーズには「制作当初からあるコンセプト的なもの」は少しもありません。「良いと思ったものをそのとき表現できるカタチで再現する」がシリーズの根底にあるものだと思います。要は「その場の思い付き」の集合体ですね。

しかし、『3』で世界の再統合をエンディングに描写したことが、結果的に『4』の制作に繋がりました。『3』できれいさっぱり終わりにしようと思っていたのに…。

最終章④~今後、出番がある?

地下迷宮編②にて、「ログの海」の汎用性の高さについて触れました。『3』におけるラスボスはモナクリフですが、彼を裏で操っていた人物がいたのです。その人物の名前は「ウェスヴィレジ」。この人物の『3』での功罪について解説したいと思います。

『3』冒頭から分かるように、当初は「モラボリーの逆襲」がテーマの1つでした。しかし、肝心のモラボリーは地下迷宮編にて僅かに登場したきりそのままフェードアウトしてしまいます。それは、『3』全体を通して一貫して登場する主人公がいなく、モラボリーをストーリーに絡めていくことができなかったからでした。「6つの世界を選択・攻略していく」という設定が仇になった形です。モラボリーを潰してしまった以上、別の「黒幕」を急きょ設定せざるを得なくなりました。そこで登場したのがウェスヴィレジでした。ギコーチェやモナクリフに取り入ったウェスヴィレジは、自らの手を汚さずして己の快楽のみを貪り続ける悪魔のような存在です。モチーフが『SSSS.GRIDMAN』の「アレクシス・ケリヴ」なのはグラフィックからも(それはもう露骨すぎるぐらいに)一目瞭然です。このように、当初のイメージマップを崩したこと、掘り下げればもっと魅力を引き出せたはずのモラボリーを亡き者にしたことが彼の「罪」でしょうか。

一方で、私も汚いもので、彼を「今後の保険」として扱ってしまった部分が「功」かなと思っています。アレクシス同様に不死身であるウェスヴィレジは、完全に倒されることはありませんでした。つまり、捉え方によっては「今後の作品にも登場する」余地があるということです。『グリッドマンユニバース』のような出演もできるかもしれないな、と。…『4』には登場しませんよ。

最終章⑤~最終章の盛り立て役

生みの親だからでしょうか、基本的に『AGESAGE』シリーズの全キャラクターには何かしら愛着をもっています。振り返ってみると、「静か」「クール」「不愛想」「内向的」な性格で描写されたキャラクターが実に多いなと。これは、私自身が「明るく社交的」でないことが間違いなく反映されているなと思っています。けれど、そんなキャラクターばかりだと「物語を進めづらい」のです。閉鎖的ゆえ、狭い世界の中ですべて自己完結してしまいますから。

地下迷宮編③で触れていますが、『3』終盤の流れはミナミの存在なしには実現しなかったでしょう。思ったことを深く考える前に行動に移してしまうミナミだからこそ、世界再統合の奇跡を起こすことができました。アヒャールやウッドではできなかったでしょう(ケンゾーならギリできたかもしれません)。

このときの活躍ぶりが買われ(?)、ミナミは『4』にも登場します。ミナミと組ませて案外面白かったアヒャールも続投です。 イメージ的にはアヒャールの方が一回り近く年上で、二人のやり取りを考えるのが楽しかったものです。このように、「もっと○○のキャラの活躍を描きたいな」という思いも『4』制作に繋がっています。